マネージャー観戦記

2003年9月 プロ野球公式戦 中日-阪神戦 思い出の北陸本線旅情
桧山とアリアスのアーチ競演にナドヤドームが揺れる

 2003年といえば阪神タイガースのペナント制覇に沸いた年ですが、平素は阪神ファンでもない私ですがたまにはプロ野球を生で観戦したいと思い、北陸から一番近い名古屋に行くことにしたのは阪神が優勝をほぼ確実にしていた九月のことでした。
 あれはたしか中旬の土曜が休日だった日でした。JR北陸本線金沢駅から特急しらさぎに乗り込み、およそ三時間あまりの名古屋までの旅です。
 北陸本線の沿線には富山、高岡、金沢、福井などの都市部を除いて後は田園風景と山間部がのどかに続いています。
 発車して程なくして左手に白山連邦が見えてきました。ここで私は駅で購入しておいた駅弁を広げて缶ビールの栓を開けました。白山の雄大な山容を眺めつつ幕の内弁当をつまみに飲むビールはやはり格別です。
 
 ゆっくりと駅弁とビールを堪能し終えると、列車は小松の辺りをとっくにすぎていました。加賀温泉を過ぎれば間もなく福井県に入ります。福井駅の駅弁といえばカニ飯が有名ですが、私は食べたことがありません。別に意識して食べないわけでもないのですが今まで北陸本線に乗ったことは何度もある中で、食べずに今日まで生きてまいりました。

 こう書くと流れ的に今回は食べそうだなと思われるかもしれませんが結局今回も食べないことにしました。なぜ私がカニ飯を頼まないのかというと、別にさっき食べた幕の内弁当がまだ腹に残っているからではありません。それどころかまだ私の食欲は収まっていないのでさらに何か食べようとしているのです。
 
 そうこうしているうちに車内販売のおばちゃんがやって参りました。そして私は北陸本線に乗るたびにカニ飯には目もくれずに必ず食べている鯛の押し寿司(商品名”鯛の舞”)を注文しました。ぬかりなくビールも追加して、鯛寿司のフタを開けました。
 中にはいつもと変わらぬ、綺麗に皮目が立った鯛の身を乗せた寿司が綺麗にならんで入っています。わたしはこれが大好きなのでいつも福井県内を通過する時は、カニ飯どころではないのです。カニ飯は他のお客さんに任せて、私は鯛寿司を一切れ口に放り込みました。それほどすっぱくもなく、寿司飯も甘さはかなり抑えられていて、鯛の身には塩気がわずかに効いていてそれでいて皮にはしっかりと旨味があり、こんな旨い押し寿司はほかにどこを探しても無いと私は思っています。(あるかもしれませんがこれが一番だと思って食べるのが幸せなのです。)そしてこれをつまみにビールを飲むのが私のスタイルです。ただし一箱食べ終えるとビールと共にかなり腹を膨らませてくれます。
 またたくまに寿司箱は空になってしまいました。列車は鯖江市の辺りを走っているようです。北陸トンネルを抜けるまでしばらく休憩することにしました。鯖江、武生を過ぎると車窓の外は田園風景から山あいの景色に変わります。冬の間は雪景色が綺麗なのですが、今は夏の終わりから秋にさしかかる途中で、紅葉もなく緑の木立と草が生い茂っている様を眺める感じです。
 やがて北陸トンネルを抜け列車は敦賀駅に入りました。鯛寿司(商品名”鯛の舞”)はここ敦賀市で作られているのです。
 若狭湾で獲れた鯛を使っているから旨いんですねぇ。ここで予定通り私は二箱目の鯛寿司とビールを注文しました。列車は敦賀駅を出ると再び滋賀県との境界の山間部に入ります。
 このあたりを地図で見ると線路がループしている(しかもトンネル)という非常に珍しいポイントがあるのですが、鯛寿司とビールを堪能してほろ酔い加減の私には全然列車がループして走行しているのがサッパリ分かりません。(実際酔って無くても殆んど分からないはずです。)
 二箱目の鯛寿司はゆっくりと楽しみながら車窓の風景をながめつつ、列車は米原駅に入り、いよいよ東海道にさしかかります。ここまで来るとさすがに北陸を離れたなというのを感じます。米原もそれほど都会ではないので一見風景は北陸の田舎とはそんなにかけ離れていないのですが、ただなんとなく違う土地に来たのだなと思いました。(何なんでしょ)
 そして米原を出てから約一時間後、列車は終点名古屋に到着しました。
 

 

〜前編〜